地域と食。その連携を描く
マーケティング・ストーリー。

美味しいストーリーです。
お腹が空くかもしれません!?

準備OK? では開幕!


パンで街を幸せに

突然ですが、
美味しいパン屋さん、近くにありますか?

あると幸せですよね。美味しいパンは食事をぐ~んと豊かにしてくれます。

たとえば、バゲット(baguette 杖の意。フランスパンの1種)の美味しいパン屋さんがあって、焼き立て熱々が手に入る幸運に恵まれたら…。

ダッシュで家に帰り、厚めに切ったバゲットの上に、バターを1かけら落としましょう。ジワーっと溶けて広がる黄色いバターの流れ。
その美味しい行方をまずは目で追いながら、次は舌で味わいながら。バゲットを思いっ切り楽しんでください。あ~美味しそう!

熱々のバゲットbaguetteをスライスして、和食器・赤絵の角皿に乗せ、バターを1かけら落としたところ。溶けたバターがバゲットに染み込んでいきます。フランスパンの魅力である香ばしい香りとバターの香りが溶け合ってます。美味しそう。矢嶋ストーリー.tokyo作品『パンで街を幸せに』(矢嶋 剛・著)の作品イメージ写真1です。



そして夜。帰って夕飯を作るのが面倒なときも、美味しいバゲットが家にあれば大丈夫。

バゲットを1センチくらいの薄切りにし、即席のカナッペをつくるんです。

スライスチーズを乗せて so good!
オリーブオイルに浸して delicious!

あとはプチトマト(洗うだけ)でも小皿に並べて。スクランブルエッグがあれば最高!

なんて感じでサササっと、ヘルシー・カナッペを楽しみましょう。これ実は、ワインともよく合うお手軽ディナーなのです。(夜遅い食事は太るから、量もこれで十分)

この快適に気づくと、食生活が変わります。

「ご飯の残りを冷凍し電子レンジでチン生活」(長いな)と少し距離が置けます。

「チンご飯」(今度は短い?)、食事のレパートリーが意外と狭いですよね。

たとえば、「チンご飯」の汁物。どうしても味噌汁や吸い物をを選びがち。ところが、バゲットならスープを選びません。味噌汁と握手できます。トマトスープとのコンビも成立します。もちろんポタージュはバッチリ。そして惣菜も自由自在。なので困ったときのバゲット、いや、ほんとに。

しかも家族に受けがよい(これ重要!)
小洒落た感じというか、フォーマル感というか、ちゃんとしている雰囲気があります。

ナントカにバゲットを添えて。

この魔法、ナカナカ強力です。スーパーで買った鶏の唐揚げも、バゲットと一緒だと「鶏肉のフライ・唐揚げ粉をまぶして」になったりして(笑)

矢嶋ストーリー.tokyo作品『パンで街を幸せに』(著者・矢嶋 剛)・作品イメージより。スーパーで買った鳥の唐揚げもバゲットと一緒だと、ちょっとお洒落な感じがします。そこにトマトとアスパラガスのサラダを添えてみました。いかがです? ちょっとした、おうちごはんでしょ!矢嶋ストーリー.tokyo作品『パンで街を幸せに』(矢嶋 剛・著)の作品イメージ写真2です。



だから勃発! 美味しいパン屋さん発・バゲット・プチ・ブーム。すると大変。各家庭で「今日はバゲットと何?大会」が頻繁に開催されるようになります。

お父さんからの提案で、焼き鳥&バゲット、息子さんからの提案で、焼肉&バゲット、お母さんの提案は、エビチリ&バゲット。

こんな感じで何でも試してみる訳です。すると、みんな美味しかったりして。

だから大会はさらに盛り上がります。
「次はアレを試す?」で話が弾みます。

さてさて、
この盛り上がりに一役買うのがワインです。

もともとバゲットとワインは相性がよい。

ですから、バゲットに合うオカズにはワインも合うんじゃない?って発想がポンポン飛び出して。
もう、焼肉→バゲット→赤ワインってバッチリ!的な世界がたくさん見つかります。

そうなると、バゲット発で「オカズとワインのマリアージュ(結婚の意)」が気になり出して! この手の相性はワイン本やワイン雑誌に散々書かれていますが、そんな情報は脇に置き、我が家の「美味しかった~」発で、献立の予算をきっちり計算。お手頃ベスト・チョイスを組み始めます。

その豊かな経験をもって、ある日書店でワインブックを立ち読み。記事に「タイ料理とワインのマリアージュがgood」なんて書いてあると、「そこにバゲットは合うか~? 我が家は今日試してみま~す! トム・ヤン・クンはどうなるかぁ~?」となり、新しい組み合わせが食卓に登場。

と少々サク乱気味になりましたが、要は近所に美味しいパン屋さんがあると、各家庭の食卓が大いに盛り上がりますという話。(ここで一息)

さて、面白いのは、ここから。

美味しいパン屋さん発で、お店近くのご家庭が「バゲットとオカズwithワインのマリアージュ~」で活気づくと、皆さんの買い物が変わります。

従来なら、もう忙しいし、時間もないし、面倒くさいし、何の反応もないんだから、買い物なんてさっさと済まそう~(疲れた~)

こうなっていたお母さんたちが、「みんなも喜ぶし、バゲットにアレも合うかな?」って思って食材を探し始めます。

「肉屋さんのメンチカツを乗せたら…」とか
「鰯にパン粉をまぶして焼いて…」とか。

忙しい中、「いつもと違う」を試そうかな?を想ってくれます。
(全国のお母さんに感謝!)

すると、買い物のコースも変わります。

まずパン屋さんに寄りバゲットをget! 
次は肉屋さんで熱々のメンチカツをget! 
それから残りの食材を…

なんて感じで。

この様子をドローンで上空から観察すれば、パン屋さん発で買い物動線が伸びていくのが解るんでしょうねぇ。

そうそう、買い物の仕方を変えるのはお母さんたちだけじゃなくて。

独身サラリーマンのA君、バゲット自炊にハマってブログ。

ご飯党だった、あのお爺さん、最近はバゲットを乗せたランチ・プレートに凝りだして。

なんて話が方々から飛び出します。

かくして街は、「バゲットと今日のマリアージュ」でいっぱいになりました。

すると、パン屋さんの入る商店街も盛り上がっていきます。

「なんかメンチカツが最近よく出るんだけど…」と肉屋さんが首をかしげる背景に、酒屋さんが「不思議とワインが売れ始めた」と喜ぶ背景に、美味しいバゲットの活躍が…。

肉屋さんで買ったメンチカツ、揚げたてです。その肉汁いっぱいの熱々をバゲットbaguetteと一緒にいただきます。お腹ペコペコ。早く食べたい。矢嶋ストーリー.tokyo作品『パンで街を幸せに』(矢嶋 剛・著)の作品イメージ写真3です。



「♪なぜ~かは知らね~ど、売り~上げ伸びる~」にホクホクだった商店街の店主たち、さすがに商売人です。ある日、変化の遠因にピンと来ました。

「不思議な事もあるものだ」と思ったのは、この商店街組合の理事長さん。

今まで商店街としてイベントをし、特売し、チラシを撒いた活動よりも、
「あのパン屋のほうが効くというのか!」

訝(いぶか)ってみたけれど効果は明らか。

「商店街のみんなも喜んでいるし、それはそれでいいとして…」

どこかスッキリしない理事長でした。

実は、その気持ち、商店街支援の補助金を出している役所も同じだったようです。ある日、理事長の元へ依頼が舞い込みました。役所の会議に出席し、最近の商店街隆盛について話をしてほしいと言うのです。

(時間は流れて…)

その会議の席。
開会早々、役所の課長が理事長に促します。

「○○さん、最近のご隆盛、耳にしております。早速ですが、理由をぜひお教えください」

理事長は頭を掻きながら、こう語りました。

「日頃、皆さまにはご支援を賜り、本当にありがとうございます。△△商店街を代表して深く御礼を申し上げます。
 さて今、□□課長様からお尋ねのあった件ですが、たってのご依頼ですので正直に申し上げることにします。実は、わたしども商店街としては特段何もしておりません。きっかけは、一軒のパン屋の開業だったようです」

「最初は、わたしどもも気づきませんでした。肉屋でメンチカツが売れたり、酒屋でワインが売れたり、なんか今までより売れる食品が増えたなぁというのが各店主の最初の実感でした。
 イベントや特売をしたわけでなく、季節的にも売り上げに変化のある時期じゃないのに売上げが増えたんです。
 今まで、近隣にスーパーができて売り上げが減ることはありましたが、今回は逆に増えた。けれど、スーパーが閉店したとかコンビニが撤退したとかいう事もなく。よく分かりませんでした」

課長が口を挟みます。
「では、どうしてお気付きに?」

理事長、答えます。
「肉屋の店主が思い切ってお客さんに尋ねてみたんです。あの通り…、あっ、ご存知ないですよね、気さくな性格の男なんです。
 なので買いに来たお客さんに『メンチ、お好きなんですか?』って聞いたそうです。
 そしたら答えが返ってきて、『パンに挟む』って言ったそうです。で気づいた。メンチが人気というより、パンに挟む具材が売れてるんだと」

「実はわたし、肉屋のその話を聞いても半信半疑だったんです。ですが、他の店、酒屋、魚屋、八百屋から似た話を聞くとそんな気もしてくるし、で思い切って当のパン屋に聞きに行ったんです。
 店主はまだ若いんですけど、いい人でね。日にどれくらいパンが出るか教えてくれました。そしたら驚きました。この辺にそんなにパンを食べる人がいるかってくらい売れているわけです」

「では、パン屋が躍進の火付け役に?」

「正確にいうと、火付け役じゃありません。みんな、パン屋人気に気づかずにいた訳ですから。
 もちろん気づいてからは、みんなでパン屋のパンを買って食べましたよ。バゲットってやつです。あの細長いパン。
 そのバゲットに、肉屋なんて、自分のとこの揚げ物、全部挟んで食べたそうです。そうやって研究ってんじゃないですけど、やってみて分かった事はね。課長、旨かったんですよ。なんか新鮮な感じがしました、食べていて。お客さん、これに感激したんだなって判ったんです」

「そのあと、商店街の理事連中で集まって話し合いました。
 今まで商店街として、ご支援もいただいて色々やってきたけれど、お客様を感激させてきたかなぁ?って」

「たとえば、ご存知のようにウチはテレビのロケがたくさん来るわけですよ。美人女優の◎◎さん、若手芸人の◆◆さんも来ました。
 でもね、あんなのは集客に関係ないんですよ。一瞬で終わりです。
 それとね、これもご支援いただいてイベントやるじゃないですか。人も沢山来ます。でも、その日だけです。イベントが終わったら元戻りです。
 馴染みさんからは『イベントの日は混むから、悪いけど別のところに行っちゃったわよ』なんて言われる始末で。
 いいぇ、文句を言っているんじゃなくて、反省でして。自分たちは色々と頑張ってきたんだけど、案外、お客さんを感激させてこなかったんじゃないかなって。今回のパン屋の件でね」

会議も無事終わり、店へ帰る途中で、理事長、思いました。

「まぁでも、気づけて幸運だった。
 うちはラッキーなんだ。パン屋で売れたのがバゲットだ。あれがよかった。アンパンみたいにパン屋だけで自己完結していたら、こんな広がりは無かったはずだ。
 今日話したこと、帰ったらみんなに報告しなくちゃな。街の皆さんをみんなで感激させる。それを忘れちゃダメなんだ」

帰り道。
理事長の足取り、ちょっとウキウキでした。
           (終わり)

著者より

この商店街の課題は
何だったのでしょう?

 地域商業の発展を
 支えている論理とは
 どんなものなのでしょう?
  
  考えてみてください。
  できれば、
  議論をしてください。
  
        矢嶋 剛
 

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いかがでしょう?